2025/12/23

あの音は何処

昨晩は何度か目が覚めたが、最後に起きたのはちょうど六時だった。寝床の中で起き出すのを躊躇っていると、寺の鐘の音が聞こえてきた。全くひさしぶりのことだ。冷え込んで空気が澄んできたからだろうか。
 
梵鐘のある寺は近隣の集落に四、五軒ある。でも朝晩撞いているのはそのうち一軒か二軒か‥‥。除夜の鐘が良く聞こえるのは五百メートルほど離れた浄土の寺だがどうも方角が逆だ。そうなると一キロくらいは離れるが、どうもそれらしい。途中から数え始めたが、たしかに六回鳴ってそれで止んだ。
 
近いから聞こえが良いとは限らない。もう半世紀近くなったが、こどもの頃風呂の湯船につかって聞こえてくるのは2キロほど山手に開通して間も無い名神高速道路を走る車のヒューンという音だった。その音がなんとも心地よく、風呂桶のなかでウトウトしながら聞いていたことを思い出す。それが30年前くらいに聞こえなくなり、それより手前の新幹線が聞こえるようになった。これは今も夜になると聞こえている。ところが200メートルほどしか離れていない国道の音はほとんど聞こえてこない。音の波の性格、天気、住環境の変化に左右されるのだろうか。
 
昨日井伏鱒二の『荻窪風土記』を読んでいたら、関東大震災前は荻窪から品川の岸壁を離れる汽船の汽笛がはっきりと聞こえたという伝承を記してあった。井伏が昭和初年同地に住んだ頃にはもう聞こえなかったようだ。じっさいいま電車に乗ると半時間強、荻窪はそれなりに遠い。
 
毎年大晦日は寝床で除夜の鐘の音を聴くのが楽しみだった。あれはあっちの寺、これはこっちの寺と、音色が聞き分けられた。ところがコロナ騒動のあと、0時とともに琵琶湖方面で花火を上げるようになり、この楽しみが壊された。
























0 件のコメント:

コメントを投稿