2021/10/19

因果物語

今朝もよく冷えました。15℃を切ってきたのではないでしょうか。
老母の部屋に加湿器も入れ、だんだん冬の構えになってきました。
今日もほとんど寝ていますが、昨日のようなことはなく食欲も戻り一安心。
ときおりしぐれる空模様で外出もままならず、終日ゼミの予習。
あっというまに一日が過ぎてしまいました。

休憩時間はお茶をいれて漢文から離れて、以前のブログでも紹介した鈴木正三の
『因果物語』をぼつぼつと読んでいます。
これには平仮名本と片仮名本があり、小生所有のものは漢字とカナ交じりのもの、
平仮名本は全編「くずし字」で、昔はむしろ一般的だったはずですが、
今ではとても読みにくい。流行のAIのソフトも進歩して連綿のかな文字もスマホで
写せばかなり読んでくれるそうですが……。

正三は江戸前期の曹洞宗の僧として著名な人ですが、この本は
怨霊、化け物、祟りのもの、などが全編にわたって登場します。
タイトルとしてはたとえば

 ・生きながら牛となる僧の事
 ・死霊となる僧の事
 ・女の魂蛇となり夫を守る事
 ・愛執深き僧蛇となる事
 ・妬み深き女死して後女房を取り殺す事  などなど

これをみるだけで恐ろしいですね。それに自宗の僧のことも、わけへだてがありません。
しかもみな実際に正三本人や弟子たちが実際に見聞きしたことを強調しています。

因果物語ですから、これをしめすことによって仏縁を結ばせる方途としたはずですが
実際に本人は公にしたわけではなく、弟子と浅井了以がタッグを組んで出版したようで
正三としては体験や聞き取りを書き留めて、布教の際に語る種にしていたのかと思います。
一見して中国の志怪小説を思い起こさせるのですが、
たとえば『聊斎志異』のような情緒というものは全くなくて、
よくいえば勧善懲悪、それよりもひたすら怪奇な物語になっています。
説教の種から、徐々にアレンジされて、小説として受け止められていった所でしょうか。

これらの話と禅、あるいは曹洞禅とのかかわりがどうなるのか私にはわかりませんが
少なくとも今風な禅 ZEN のイメージとはかけ離れてはいます。
いずれにしても世間の人々が、こういうことに多くとらわれていたことはわかりますな。
「葬式仏教」が求められた所以でしょうか。
そういう不安をどう取除いていくのか、悪く言えばどう取り込んでいくか。
なかなか生々しい物語ではありますね。

*これは竹原だったと思います。古い町には古い墓、旅の見所でもあります。


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