今朝から水上勉の『一休』を読み出しました。中公文庫版。10年くらい前買ったような記憶。50円のシールが貼ったままです。購入時は途中で放ってしまったのですが、このところ禅文献にも食指を伸ばしているので、なんとなく背景が見えて今度は通読できそうです。
水上勉はたしか高校生の時、湖北余呉湖ちかくで琴の糸を引く娘を主人公とした『湖の琴』を、律儀にも本屋で買って読んだのが最初。学生時代、空き時間に校舎のすぐ南にあった等持院に入った際、住職がこの寺や大学に縁のあった作家のことを話してくれました。「五番町夕霧楼」はテレビでこっそり観ましたね。学校帰りにあの界隈を歩くと、まだまだ往時の名残がありました。
そうそう同志社の北側の相国寺へ行くと、作者が修行していた塔頭が現存します、いまは知りませんが門前にたしか「雁の寺モデルの寺」なんていう案内看板が出ていたように思います。『雁の寺』は映画で知っていたこともあり、そんな背徳の物語がはたしてお寺の「売り」になるのかしら。「若尾文子」はいるのかしら。なんて。雁の寺の若尾といい夕霧楼の佐久間良子といい、まさに「女優の時代」だったんですね。
さて『一休』。いろんな評価がネット上にもあふれているのですが、例によって作者の小僧時代の体験が強いかげをおとした伝記小説には違いありません。ただそれだけでなく、専門の学者との交流のなかでなされた仕事のようですね。柳田聖山が著作の中でこの作家をたかく評価していましたし、共著・対談も多かったですから。それまでの流行作家としての作品群とは色合いは大いに異なります。一休は琵琶湖畔の町、堅田でながく修行しており、そこで大悟したというのですが、大津の人間はあまりそのことをいいません。小生は学生時代、一夏浮御堂の下で発掘調査のアルバイトに汗を流していたことがあり、ほほーと思うことしきり。ゆっくり読んでゆきます。
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