2023/05/09

折口の随筆

このところ夜中によく目が醒めます。
そうするとなかなか寝付けないので、手近な本を読むことになります。
昨夜はかつて作品社から出された日本の名随筆のなかから「山」を手にしました。
このシリーズは、随筆のアンソロジーで正・続各100冊ずつ出されており、よく売れたとみえブックオフなどでときおりまとまって、しかも安価で出ています。

「山」の編は北杜夫です。編者の「あとがき」がありますが、わずかに2頁なので、どのあたりまで関わっていたのかはわかりませんが、若い時はたしかに岳人といえるでしょう。近代以降「選ばれた人たち」からはじまって戦後大衆化しましたが、昭和の50年代くらいまでは山旅への憧憬は文学や藝術とともに青年にとって小さなものではなかったですね。
そのあと広くアウトドアブームに転じ、やがて登山はマイナーなものになり、山ガールとかがわずかに話題になりましたが、所詮作られたブームで、今もっぱら楽しんでいるのは昔取った杵柄のオジサン・オバサンだけでしょうか。

本書は著名な登山家、探検家、写真家、ナチュラリスト、ジャーナリスト、作家らによる多彩な30篇の作品が編まれています。
小生はやはり古い所で小島雨水や田部重治がお気に入りですが、昨夜は折口信夫による「山の湯雑記」、出羽山中のひなびた温泉を尋ねた紀行をチョイス。折口の温泉好きがよくわかります。もちろん歌人にして民俗学者(国学者といったほうがよいのかな)だった彼が、ただ湯治のために山中に分け入ったわけではないと思いますが、それはほとんど書かれていません。よくこれを取りあげたものだと思います。
地味と言えば地味。折口や彼がつねに敬意をはらった柳田の作品は、たとえそれが学術的な内容の高いものであっても、いつも随筆のような姿をとっているわけですが、こういう作品がほかにもあるなら探して読んで見たいと思いました。


*まわりの田んぼに水が入り水がたまっています。どおりでヤナギが大きく育つわけです

















*野バラの花はいまが盛ん

















*影が濃くなりました


0 件のコメント:

コメントを投稿